「食べられるスプーン」ってどんなもの?国産野菜でできた「PACOON」について聞いてみた

プラントベースフードや脱プラスチックなど、健康や環境を守る商品の開発を行う企業も増えてきた今日。

そんな中、2020年10月に販売開始された食べられるスプーン「PACOON(パクーン)」(以下、パクーン)が、さまざまな地域の食材とコラボレーションしたり、メディアに取り上げられたりと注目を集めています。

今回の記事では、パクーンを企画・販売する株式会社勤労食の濱崎佳寿子さん(以下、濱崎さん)にお話を聞きました。

先日都内にあるアンテナショップで「パクーン」を食べる機会があり、そのアイデアとおいしさに感銘を受けました。
御社が「パクーン」を開発することになった経緯はどのようなものだったのでしょうか。

弊社では創業時から企業や市役所の社員食堂を運営しているのですが、食堂の運営を続ける中で食育の重要性を感じたことが「パクーン」開発のきっかけでした。

社員食堂には管理栄養士が常駐し、日々の献立を考えて料理を提供しているのですが、特に自分の好きなものを選んで食事をとるような「カフェテリアスタイル」の食堂だと、野菜の入ったメニューはなかなか選んでもらえないことが課題だったんです。

子どもの頃から「野菜もバランス良く食べていくこと」の大切さを伝えるために料理教室を開催したこともありましたが、料理教室で一度に参加するのは10人ほど。多くの方に食育の大切さを広めるには限界があると感じていました。

そんな中、アイス最中の皮など食べられる食器を作っているメーカー「丸繁製菓」さんと知り合い、桜祭りの時期に食べられる食器にお団子を乗せて実験的に販売してみたら、ゴミも減るし、子どもたちが「このお皿、食べられるんだね!」と、とても喜んでくれたんです。

子どもたちが自然に楽しく食事をしている姿を見て「これは何かできそうだ!」と感じました。

また、ちょうどそのころ私の妹の子どもが離乳食を食べる時期で、外出時に離乳食とスプーンを持ち歩く際、使用済みのスプーンをビニール袋に入れて持ち帰らないといけないことがネックで、100円ショップのプラスチックのスプーンを使い捨てしているという話を聞いていました。

もし使用したスプーンをそのまま食べることができればゴミも削減できるし、子どもも持ちやすく、食育にもつながると考え、食べられるスプーンを開発しようと決めました。

カラフルでポップな色合いの「パクーン」は子どもたちの目をひきそうですよね。開発の際にこだわった点や、大変だったことはどんなことですか?

「パクーン」の色は野菜パウダーで着色しているのですが、野菜自体の色合いがきれいでも、パウダーに加工するとあまり色が鮮やかに出なかったりすることもあり、さまざまな野菜や食材を試して、どれならきれいな色が出るか試行錯誤することに時間がかかりました。

また、材料はすべて国産の食品を使用し、着色料や香料などの添加物を使っていないことも大きなこだわりです。

私の子どもが小さい頃に肌が弱かったので、食品を買う際には必ず栄養成分表示を見て買い物をしていたのですが、国産の食材を使用し、添加物もできるだけ入っていない食品やおやつはあまりなくて…。

結局自身で作ったおやつを食べさせることも多かったのですが、自宅で作るおやつの材料と同じようなものを使用したお菓子が販売されていたら手軽でいいなという想いもあって、その経験が「パクーン」の開発にも活きています。

「パクーン」のフレーバーのひとつである「いぐさ」に驚きました。「いぐさ」といえば畳のイメージを持っていましたが、食べることもできるんですね!

そうなんです!「いぐさ」のパクーンは、熊本県八代市の「食用いぐさ」を使用しています。

いぐさは八代市の特産品でもあるのですが、近年畳の需要が減って、いぐさ農家も衰退していっているのが現状で。

そんな中「地域の特産品をを守っていきたい」という想いから新たな販路を生み出し、食用に加工して販売しているお話を聞いたり、「いぐさ」は葉酸や食物繊維も豊富で健康にも良いことを知って「パクーン」のフレーバーとして取り入れることにしました。

また、国内で生産されるさまざまな野菜や食材のことを多くの方に知ってもらって食べてもらう流れができたら国内の農家さんも活性化するし、食料自給率の上昇にも貢献できると考えていることも、国産の材料にこだわる理由のひとつです。

「いぐさ」の他にも地域の特産品とコラボレーションした「パクーン」を作られているそうですね。

熊本県の「ハニーローザ」という品種のすももや静岡県浜松市の「メロン」、北海道の「とうきび」、沖縄県の島豆腐のおからを使用した「パクーン」も開発してきました。

島豆腐のおからを使用した、島おから味の「パクーン」は、琉球大学の学生さんから相談を受けてコラボレーションしたんです。

島豆腐のおからの廃棄率が普通の豆腐の廃棄率よりも高く、廃棄するためのコストもかかるため、島豆腐屋さんの経営を圧迫している現状があることを聞き、「地元の特産品を守っていきたい」という想いに共感して共同開発を進めました。

食育をはじめ、人々の健康やSDGsを意識して「パクーン」を日々開発、販売されていると思いますが、それだけでなく、世の中をより良くしていきたいというような想いを持って活動されている方々と共鳴しあってつくられていることがわかりました。

私たちが普段食べているものは「どこかの誰かが愛情をかけて作っているからこそ、目の前に届いている」ということをしっかり感じられる子どもが増えてほしいと考えています。

「パクーン」を通して、食べ物を大切にする気持ちも育てていきたいですね。

これから「パクーン」を通してどのようなことに挑戦したいですか?

海外輸出も含め、より多くの場で「パクーン」を食べていただけるようにしていきたいと考えています。

また、非常食としての提案も積極的に行っていきたいですね。

日本は地震や自然災害も多いので、いざという時にも普段から食べ慣れているものを食べることができれば、少しでも心理的な負担が軽減されると思うので、日々の食事やおやつとしてだけでなく、非常食としても受け入れてもらえることを目指したいです。

元々「パクーン」を「子どもたちが健やかな未来を過ごしていけること」を願って立ち上げたので、自分の子どもやその先の子ども達にどんなことを伝えていけばいいのだろう?と考えたりアクションを起こすことで、人々が食育や環境問題を意識するきっかけになるといいなと思っています。

ご自身の経験やご家族との関わりの中から、より良い未来をつくるために食べられるスプーン「パクーン」を開発された濱崎さん。

食べ物を大切にする気持ちや環境問題への配慮など、より良い世の中をつくっていくために何をすべきかを考えるきっかけとなりました。

濱崎さん、お話をありがとうございました!

写真提供:株式会社勤労食

執筆:屋宜美奈子

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